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「大将、ごちそうさんでした。
おあいそお願いします」
「ハイよ、おあいそね!」
日曜日、お上さんと訪ねた「安平」。
仕上げに「トラフグの白子」をいただき大満足。
そろそろ席を立とうかと「秋鹿」を飲み干したところへ、
「ところでduoさん、ヨナキって知ってる?」
まさかここで蕎麦でもあるまい。
蕎麦じゃないとすると何だ?
「さあ?何スか、ヨナキって?」
「標準和名をテングニシっていう巻貝。
美味いのよ。
コリコリってして。
アワビみたいな味わいなんよ」
「・・・」
「どう?食べて帰らん?」
というわけで上げかけた腰が静かに着地した。
どうにも酒飲みの急所というのは非常に分かりやすく、
しかもこれほどにも脆いものかとつくづく思うわけで。
私の表情を見切った大将、
すぐにヨナキなる貝の刺身の支度を始めた。
支度を始めたが、
問わず語りに大将が喋りだした。
「ヨナキっていうのは夜泣きナンよ。
っていうのがテングニシってな、
唾液腺に『テトラミン』っていう神経性の毒があってな、
それを取らずに食べると中毒をな・・・」
中毒て・・・
何だか心なしか、
大将の目が笑っているように思えてならんのだが。
気のせいだろうか。
「それでな、
唾液腺を取るの面倒くさいってな、
食べた人がおるんよ。
その人な、翌朝目が覚めて鏡を見たらな、
ごっつい目を泣き腫らしとったらしいンだわ。
夜中、ごっつい泣いたらしい・・・」
「・・・」
やっぱり目が笑ってる。
っていうか、
その人ってここの客じゃねえだろうな?
「それってお腹を壊したりとか、
苦しむとかあるんですか?」
「いや、そういうのは無いネン。
ただな、ごっつい泣くネン。
ほんで夜泣きいうンやな・・・
はい、お待ち!」
トンッ、とカウンターに置かれた器は件の夜泣きのテングニシ。
それを見てお上さん、
小さな声で、
「やめなさいよ!」
いやいや。
ここで止めちゃあ男がすたる。
大将の視線を感じながらまず一つ。
「!」
これはまた何と!
アワビというには些か硬すぎるきらいはあるが、
噛み締めると仄かな甘さが口に広がり、
貝特有の旨さと相まって実に美味しい。
テトラミンの恐怖など雲散霧消。
ふと気が付くと、
さっきまで「止しなさいよ!」と言っていたお上さん、
せっせと箸を運ぶ表情が恍惚として・・・
● 「テングニシ (夜泣き) の刺身」
◇味 ★★★★
◇話題性★★★★★
※ 原因となる主な貝
アヤボラ(ケツブ)、エゾボラ(マツブ)、ヒメエゾボラ(青ツブ)
エゾボラモドキ(山陰地方で言う「赤バイ」)、クリイロエゾボラ
アツエゾボラ、チヂミエゾボラ、テングニシ(夜泣き)
※ 症状
食後30分くらいで物が二重に見えるなどの視覚障害、
めまい、頭痛、船酔い感などの症状が現れる。
これまでに死亡例が無く、
一過性の症状なので通常数時間で回復するが、
人によっては症状が重くなるので、
ツブ貝を調理する際には十分に注意すること。
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