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食の考察」缶詰編
●「サバカレー」 【信田缶詰株式会社】
おっ、懐かしい・・・と思う方も多いはず。
'96年夏秋に放送された「コーチ」というTVドラマの中で誕生した缶詰だが、
あまりの問い合わせの多さに実際に商品化に踏み切ったという話題の缶詰だ。
ただしこの度の食の考察で取り上げる「サバカレー」は別メーカー。
「コーチ」で使われたのは川岸屋水産の本家「コーチのサバカレー」で、
上の写真は信田缶詰(明治38年創業)の元祖「サバカレー」。
「サバカレー」の本家と元祖もいわく因縁があって面白そうなのだが、
まずは信田缶詰ってどういう会社?と検索してみれば・・・
これがユニーク。
とりあえずその変遷をたどってみると、
◇1996年10月 サバカレーが研究の末、ついに商品化に成功。
(原文のままだけど、研究ね・・)
◇1996年11月 クリスマスセット 5,000セット限定発売
(「サバカレー」のクリスマスセットて・・・)
◇1996年12月 正月用 50,000缶生産限定
(正月用も?)
◇1997年 2月 バレンタイン用ラベル缶発売
(やっぱりそう来るか)
◇1997年 3月 サバカレー 応援歌『ゼッタイ100%』発売
(応援歌?何で?)
◇1997年 7月 サバカレー レーシングチーム結成
何でもありだな。
っていうか、何でもできると思い込んでしまうほど当時は売れたということかな。
何となく「その後」が見えるような気がしなくもないが、
何はともあれ、とにかく物申すならばひと口食べてみてからにしよう。
・・・カレー味だ。
実にカレー味だ。
サバは・・・特にサバである必要はなさそうだ。
不味いのか?と聞かれれば、
「不味くはない」と言い切れる。
では、また食べたいか?と聞かれれば、
「もう要らない」と言い切れる。
●「サバカレー」
◇話題性・・・★★
◇ 味 ・・・★★☆
●「サワラのカラスミの粕漬け」
「カラスミ」と聞いて先ず思い浮かぶのは「ボラの卵巣」だ。
ところが今回の「カラスミ」は「サワラの卵巣」を使用しているという。
「はて、サワラの卵巣?」と調べてみると、
そもそも中国から日本に製法が伝わった時の「カラスミ」の原料は、
「ボラ」ではなく「サワラ」の卵巣が使われていたらしい。
それが17世紀末頃から野母半島沿岸のボラの卵巣が原料として定着したのだが、
それでも讃岐周辺ではその後も「サワラの卵巣」を使って作り続けていたという。
つまりは我国の「カラスミ」のルーツということになるのか。
今回の「食の考察」はその「サワラのカラスミ」を更に粕漬けにしてあるという。
ただでさえ珍しいものを何故そこまで?
不思議に思わぬではないが先ずは食べてみることに・・・
予め粕漬けと知っているからか微かに清酒の香りがするような気もするが、
どれほどのインパクトが感じられるというものではない。
ただそれよりも気にするほどではないが若干の生臭さ、
ふむ、ひょっとするとこの生臭さを隠すための粕漬けか?
「カラスミ」の製造過程で一番に神経を使うのは恐らく血抜きだろう。
これがしっかりできていないと生臭くなるのだ。
(こちらを参照 → http://www.geocities.jp/duoneemu/recipe6.html )
「サワラの卵巣」はその"血抜き"という作業がし辛い材料なのかもしれない。
となれば「カラスミ」の原料が「サワラ」から「ボラ」へと変わった背景、
この辺りに問題があるのかもしれない。
そのまま食べて生臭いとなれば「カラスミ」の定番の食べ方、
薄くスライスしたものを軽く焙ってみる。
やはりこれが正解。
香ばしい香りが立ち上がって生臭さは微塵も感じられない。
「おーっ、これぞ『カラスミ!』」と、右手はやはり酒を満々と湛えたグラスへ。
この贅沢極まりない美味さを味わえるのなら、
再度「カラスミ」作りに挑戦するのも悪くない・・・
が、飲みながら考えた。
「カラスミ」を作るまでの手間。
或いは失敗した時のあの生臭さ。
これらの負の要素と自家製の贅沢極まりない美味さという正の要素、
この2つを秤にかける。
・・・リスキーだ。
例えば6対3で迎えた9回裏、
2アウト満塁でバッターは王貞治。
1発出ればサヨナラというシーンで、
あろうことか「ピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー、duo」。
これくらいリスキーだ。
●「サワラのカラスミの粕漬け」
◇話題性・・・★★★☆
◇ 味 ・・・★★★☆
●「いなだ」
関東では「ブリ」の幼魚を「いなだ」と呼ぶが、
今回「食の考察」で取り上げるのは能登の珍味「いなだ」。
「いなだ」とは塩をした天然ブリを天日で干し上げたもの。
ただし天然ブリと言っても使うのは脂の乗らない痩せたモノがベストという。
というのも脂の乗ったモノは脂ヤケして日持ちもしないかららしい。
実は私、以前これを作りかけたことがある。
堅干しの干物どころか包丁も立たぬほどカチンカチンに干し上げた魚、
凝縮された旨みが塊となってこれはさぞかし旨かろうと思ったのだ。
だがこれがなかなかに一筋縄では行かない。
何しろ一夜干しとはわけが違うのだ。
カチンカチンのガンガンに堅く干し上げるのに一体何日・・・
・・・
・・
と、ある日、気付くと辺りには異様な臭いが漂っている。
何やら楽しげに蝿も飛び回っている。
臭いの元はどう見て見ぬ振りをしても歴然としている。
そう、私の「いなだ」は腐ってしまった。
というわけで一度は口にしたいと思っていた「いなだ」、
この度やっと、やっと、やっと入手。
こ、この薄っぺらな透けるような身にどれほどの旨みが詰っているのか。
それを知りたいがために作りかけた「いなだ」がどれほど異様な臭いを放ったか。
そしてその臭いのために私がどれほどお上さんの痛い視線に晒されたか。
姿勢を正して先ずは一切れ。
おっ、これは旨いじゃん !!!
やや塩辛いがそれにも増して確かな旨みが口の中に広がる。
酒との相性は言うには及ばぬが飲むには大いに及ぶ。
何だかおかしな日本語だがこの際些事に構ってはおられぬ・・・
が、飲みながら考えた。
魚を干し上げるまでの手間、
もしもまた失敗した時に辺りに漂うであろう強烈な臭い。
そしてそこに乱舞する蝿。
これらの負の要素と自家製の凝縮された確かな旨みという正の要素、
この2つを秤にかける。
・・・リスキーだ。
例えば6対3で迎えた9回裏、
2アウト満塁でバッターは王貞治。
1発出ればサヨナラというシーンでサインは「勝負!」。
これくらいリスキーだ。
●「いなだ」
◇話題性・・・★★★
◇ 味 ・・・★★★☆
●「岩ガキ」
1ヶに1,000円も出せば大人の握り拳2~3個分の特大の殻に入った「岩ガキ」が手に入る。
しかしそこは庶民のささやかな楽しみ、
そんな贅沢は許されないから出せるのはせいぜい数百円まで。
それでも「マガキ」に比べれば優に倍はありそうなものが食べられるのだ。
網焼きメインの今夜の「岩ガキ」だが、
今年の初物は先ずはそのまま生で・・・
オ―――――――――ッ!!!!
これはこれは・・・ともっともらしく頷きながらも、
口の中の余韻が消えてしまわぬうちに右手はすかさず清酒のグラスに。
「生ガキ」と辛口の白ワインの代名詞「シャブリ」の相性の良さはあまりにも有名だが、
「生ガキ」と良~~~~~く冷やした清酒、
これなんぞも「日本人で良かったぁ」としみじみ感じる瞬間だ。
夏になれば「スイカ」「そうめん」「かき氷」「ウナギ」等々が定番だが、
私にとっては「岩ガキ」も夏の到来を強く感じる食材だ。
というのも今でこそ夏の高級食材として全国区に成長した「岩ガキ」、
漁業関係者の管理も一層厳しくなった感があるが、
まだ私が若い頃は右も左も「食べたければ自分で獲ってくる」という時代。
海水浴がてらちょいと今夜のおかずに10ヶばかし・・・
だから「岩ガキ」と言えば夏の太陽を反射してギラギラ光り輝く水面、
海水が乾いてザラザラと塩が浮きあがった塩っ辛い肌、
「岩ガキ」を求めて潜ったテトラのすぐ側を透明なキスが群れで泳いで行く風景、
裸足で歩けばやけどをしそうな熱い砂 etc のイメージと直結するものなのだ。
まあ何れ私の如き素人に毛の生えたような密猟者には、
寛大であった古き良き時代の話なのだが・・・
おっと、回想に耽ている間に網焼きが良い感じだ。
手早く殻をこじ開けたならば目で楽しむ時間すら勿体ない。
熱々を一気に!
オッ・・・
オッ・・・
●「岩ガキ」
◇話題性・・・★★★
◇ 味 ・・・★★★★
●「クロフジツボ」【節足動物門 甲殻綱 蔓脚亜綱 無柄目 フジツボ科】
「節足動物門 甲殻綱」って・・・ひょっとして「フジツボ」って・・・
石灰質の硬い殻で岩やテトラポッドに張り付いたままの固着動物。
それがまさか「節足動物門 甲殻綱」って・・・
そう、これがまさかの「エビ」や「カニ」の仲間なのだ。
以前、やはり「食の考察 その47」で紹介した「カメノテ」と非常に近い。
ずいぶん前に食べた「フジツボ」は殻の大きさも子供の握り拳大ほどもあり、
可食部も結構大きかったものだ(おそらく「ミネフジツボ」)。
それが今回の「クロフジツボ」はどれも私の親指ほどの大きさで、
可食部に至っては食べるというより舐めるほどしかない。
ただ塩茹でにした味は思いのほか上々で、
何と形容したものか・・・やはり貝に近い味わいか・・・
しかしこれは食べるというより「出汁」を取るのが正解かもしれない。
茹で汁の味をみて先ず思い浮かんだのは「イガイ」の吸い物。
立ち上る磯の香りか私好みで何とも美味しい。
そういえば、上述の「ずいぶん前に『フジツボ』を食べた」時の話。
大きな皿に大きな「フジツボ」が数個盛られて出てきたのだが、
驚いたのは皿と一緒にペンチが出てきたこと。
「はあっ?」と訝しげな顔をしている私に店の主が一言、
「そのペンチで殻を割りながら食べてよ」
●「クロフジツボ」
◇話題性・・・★★★
◇ 味 ・・・★★★
●「イボニシ」【新腹足目アッキガイ科】
2~3cmの小さな巻貝。
磯遊びをしていると有るときにはいくらでも目にするのだが、
無いとなるとこれがなかなか見つけられない。
それを先日、偶然見つけたのは磯ならぬ「かろいち」→ http://www.karoichi.jp/。
少々粒が小さいが30ヶほど盛って一カゴ300円也。
磯に探しに行けば良いようなものなんだがなぁ・・・
と思いながらも目の前の現物の魅力には抗えなくて、
「あばさん、これ一カゴちょうだい」
その夜は当然のことながら「イボニシ」の塩茹で(とビールと生酒)。
この貝の良い所は何と言っても気取らずに我輩流で行けること。
「エゾボラ」やその他諸々の「Bツブ」のようにそれらしいことを言う必要はない。
爪楊枝でひねり出してひたすら食べる。
口の中に広がるのは純粋な磯の香りと「イボニシ」独特の風味。
この風味は舌にピリッとくる苦味というか辛味と感じられて、
そのため地域によってはこれを「タバコニシ」と呼ぶ。
貝好きの我が家のお上さんも、
この風味が舌を刺してイヤだと言って手を出そうとしない。
つまりは女・子供には理解できない大人の味の「タバコニシ」なのだ。
そしてこれは、仕方がないけど独り占めできるありがたい食材なのだ。
●「イボニシ」
◇話題性・・・★★☆
◇ 味 ・・・★★★
http://www.geocities.jp/duoneemu/recipe20.html
↑ で仕込んだ「小イワシの塩辛」。
仕込んだその場でチョロっと舐めてみて、
「!」
驚いた。
刺身では知るべくもない強烈な旨みが既にそこにはあったのだ。
それは「小イワシの塩辛」を仕込んでから8日目の夜、
そう、「鮒寿司」をマッチォさんとおぢぃ.comと共に食べた夜のことだ。
「鮒寿司」をつまみながら酒を煽る二人に、
「こういうのがあるけど、どうかな?」と出してみる。
「おっと、これは何だ?」
言う側から箸を出して口に含んだ二人の反応は明らかに「鮒寿司」とは別物。
「『鮒寿司』も良いけど、これは・・・・・・・凄い!!!」
二人とも物凄く気に入ってくれた様子。
これは簡単にできてしまうのだからと作り方をレクチャーするのだが、
二人の脳みそに届いたものかどうか。
「そうか・・・小イワシが手に入ったらここに持って来ればいいのか!?」
「チゲーよッ!!!」
●「小イワシの塩辛」
◇話題性・・・★★★
◇ 味 ・・・★★★★
ちょっした遊び心で始めた「食の考察」が今回で「その100」。
「考察」などと勿体をつけてはいるが、
その実ただ食べるだけという気軽さがここまで続けさせたのかもしれない。
何事にも「三日坊主症候群」的私がよくぞここまで・・・
さて今回私が準備したのは、
「食の考察」を始めたばかりの頃、
「もし100回を迎えたらその時はこれにしよう」と心に暖めてきた食品。
「鮒寿司」。
数年前に聞いた話。
その日、知人は深夜にはたと思いついたのだそうだ。
「鮒寿司が食ってみてぇ!!!」
何故そうなったのかは知らない。
が、とにかく彼は思いついたのだ。
そのまま車をかっ飛ばして琵琶湖を目指す。
翌朝、土産物屋が開くのを待って彼の思いは叶えられた。
「で・・・、鮒寿司は美味かった?」と聞けば、
「あまりの強烈な臭いに全く歯が立たんかったんですわ」
と、小さな声で彼は答え寂しそうに笑った。
それ以来の「鮒寿司」なのだ。
私にとっても未知のその食べ物は心の奥底に深く居座り、
小さな恐怖と大きな憧憬となっていつまでも変わることがなかった。
それが今、とうとうここに・・・
というわけで「鮒寿司」。
結論から言うと実に旨い。
「あまりの強烈な臭い」
と知人に言わしめた香りは乳酸醗酵した沢庵の古漬けのそれと変わりないし、
鮒特有の臭いが残っていれば厳しいと思っていたがそれもない。
抱卵した身と皮の心地良い食感と適度な塩気に清酒が進む。
いや、進みすぎる。
この日、「相談がある」と久しぶりに顔を出したマッチォさんと、
そういうことならのこの人の意見も参考にしようとお出で願ったおぢぃ.com。
「鮒寿司」の臭いに、
「ギョエ――――――――――――――ッ!!!!!!!!!」となるかと思いきや、
「旨い、旨い」と喰らい、かつ飲む。
「マ、マッチォさん、その酒、少し残しておいてぇ・・・(涙)」
●「鮒寿司」
◇話題性・・・★★★★
◇ 味 ・・・★★★★
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
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